アラフォー過ぎても人生楽しみたい  本・子育て・人間関係

アラフォー司書です。書評中心に思うところを綴ります。キラキラしてません。

『夏日狂想』~女の人生、独りになってからが本番~

こんにちは。
10月に入って数日経ちましたがけっこう暑いですよね…。
なんか毎回暑い暑いばっかり言ってる気がしますが(汗)。
毎晩風呂上りに子供の髪を乾かしますが、その時の暑いこと暑いこと。
耐えられずネッククーラー付けますからね。

 

さて、いつまでも暑い暑い言ってても仕方ないので今日も元気に本を紹介します!

 

今回読んだ本は窪美澄さんの『夏日狂想』です。
”かじつきょうそう”と読みます。
明治から昭和を生きた作家、長谷川泰子をモデルとした女性の激動の生涯を描いた作品です。

前回『熊はどこにいるの』で女の人生について様々に考えさせられました。
その流れでこの作品を選びました。

ではさっそくどんな作品なのか見ていきましょう♪

 

 


まず作者の窪美澄さんについて

 

1965年、東京都稲城市生まれ(わりと近くに住んでいたことがあるのでちょっと親近感♪)。
ご実家は酒屋さんでしたがお父様の自己破産の影響で短大を中退し就職。
出産後はフリーランスの編集ライターとして活動されました。
2009年に「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞しデビュー。
「ミクマリ」収録の『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞受賞。
2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。
2019年、『トリニティ』で第161回直木賞候補、第36回織田作之助賞受賞。
2022年、『夜に星を放つ』で第167回直木賞受賞。

44歳のデビューから怒涛の展開ですね!

 

 

『夏日狂想』ってどんな話?

 

先述のとおり、明治生まれの作家、長谷川泰子をモデルとした女性の生涯を描いた作品です。
主人公の名は中野礼子。
女性の自由意思は認められず、結婚して子供を産むことが決められた道だった明治時代。
女優を志した礼子は故郷の広島を脱出して東京、京都と流れていきます。
そこで出会った年下の水本(詩人の中原中也がモデル)と片岡(文芸評論家の小林秀雄がモデル)と三角関係に陥る礼子。
やがて破綻する三人の関係。
太平洋戦争を生き延びた礼子はこれまでの経験をもとに、自らも書くということに向き合っていきます。

 

10代20代の若い礼子の衝動的で激しい生き方には目を見張るものがありますが、なんといってもアラフォーの私にとっての見どころは一人になってからの礼子の生き方!
「書く」ということに真摯に向き合い、少しずつ少しずつ周囲の支持を得て、死ぬまで作家として歩み続けます。

ライターから出発して44歳でデビューした窪さんが礼子(≒泰子)にシンパシーを感じたのでは、と思わされます。

 

全く時代背景の違う女性の話ではありますが、アラフォー以降でも挑戦したいことがある女性にとって強いエールとなる作品だと思います!

 


アラフォー的見どころ①男と同じ土俵に上がる女、礼子

 

礼子は美人です。
だから当然モテるし恋愛の機会に恵まれます。
詩人の水本、文芸評論家の片岡の二人を相手に激しい愛憎を繰り広げて別れた後は、作家志望の橘と新たな恋愛を始めます。
おっと、礼子の惹かれる男性には”文学の才能がある”という共通点がありますね。
才能ある男性に出会うとどうしても惹かれてしまうんですね。
でもどの男性とも関係が破綻して別れを選んでいます。


なぜなんでしょうか?


50代を迎えた礼子と片岡が久々に語り合うシーンがあります。
いまや作家として歩む礼子に片岡は、

 「誰もが、そんなことができる女だと、思ってはいなかった。(中略)男たちを翻弄する女だと、僕も、まわりの人間も君のことを思い込もうとしていた。(中略)正体を掴みきれない君のことが怖かったんだ、皆…」
と語りかけます。


そう、周囲の男性は、従順ではなく男と同じ土俵に上がってくることを匂わせる礼子を恐れていたんですね。
だから関係が破綻したのでしょう。


このシーンを読んで、自分の傷とも言えないような古傷が手当てされたような気分になりました。
思春期の頃から現在に至るまで、私は男性ウケしない(する必要は全くありませんが!)し、それどころか基本的に男性から回避される女だと感じています。
自立心が強く男性に甘えるという考えが弱いからだと思います。
そのせいで若い頃は「どうせ私は」と思っていました。
でもアラフォーで子育てにまい進する今となっては、それも過去の甘い古傷に過ぎません。

 

恋愛市場から降りたあと「書くこと」に真摯に向き合う礼子が清々しいです。

 

私も無事に恋愛&結婚市場から降りることができて本当に良かった。
これからは「文学作品の魅力を伝える」というライフワークに静かに取り組んでいきたいです。

 

それでは今回はこのへんで。