こんにちは。
11月に入っても日中けっこう暖かいですね。
先日入った商業施設内が暑すぎて、こりゃかなわん、とトイレで急いでカットソーを脱ぎました。
外は風吹いたら寒いし、屋内は暑いし。
もう何を着ていいのかわかりません。
さてさて、最近日記ばっかり書いてて久々の書評ですが、津村記久子さんの『うそコンシェルジュ』にしました。
2024年刊行の短編集です。
芥川賞作家の津村さん、元気が出るお仕事小説で有名ですね!
ではさっそく見どころを見ていきましょう!
津村記久子さんってどんな人?
1978年大阪市生まれ。
京都の大谷大学文学部卒業後、就職氷河期の中、印刷会社に就職します。
その会社で上司から苛烈なパワハラを受けて10カ月で退職します。
転職後の2005年、「マンイーター」(単行本で『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。
2009年『ポトスライムの舟』で第140回芥川賞受賞。
ほかにも織田作之助賞、川端康成文学賞、芸術選奨新人賞、紫式部文学賞、谷崎潤一郎賞などなど山のような受賞歴です。
パワハラ被害や兼業作家の経験からか、職場を舞台にした作品が多くあります。
『うそコンシェルジュ』ってどんな話?
いずれも女性が主人公の11編の短編集です。
主人公のほぼ全員が社会人ですが、一人だけ小学生が主人公の短編もあります。
どの作品も、現代日本に暮らす普通の人の普通の日常を描いています。
日常生活の人間関係の中で生じるアンバランスさ、そのアンバランスさに対する主人公の心の動きが丁寧に描かれます。
「職場」「学校」「家庭」といった自分が属している社会。
どんな社会でも属し続けるのはけっこうしんどいもの。
(もちろん脱退するという選択肢もありますが!)
心の中に生じる気持ちの波をなんとか飼いならしながらなんとか社会の中で生活する主人公たち。
読むと「私も一緒だわ」と感じて、ちょっと心がゆるみます。
アラフォー的見どころ①クズを見てホッとする気持ち、めっちゃわかる…
「第三の悪癖」という作品が一番刺さりました。
主人公の会社員岩崎は友人関係で悩んでいて、気分をまぎらわせるためにスマホ内のアバターをいじめています。
他部署の先輩社員中山(女性)もまた仕事や親のことでストレスを抱えていて、彼女の場合ちょっと独特の対処をしています。
それは四股不倫で炎上中の芸能人<C>のスキャンダルを徹底的に調べること。
中山いわく、
”こいつすげえクズだなって思ってたら、自分のことをゴミみたいだって思う時間が減るから”
とのこと。
わ~か~る~!!
その気持ち、わかります!!
子供が保育園児の頃、日常がしんどかったんですよ。
思うように働けなくて収入は不安定だったし、子供は遊びたいさかりで夕方遅くやっと連れ帰っても同居の母は我関せずで家事が地獄の忙しさだったし。
そんな時、子供が寝たら夜な夜な取りつかれたようにめちゃコミックでマンガ読んでました。
読むのは決まってネグレクトもの。
ひどい内容ばっかり。
楽しくもなんともないのに読まずにはいられませんでしたね。
まさに中山と同じで、「クズ」を見てまだ下には下がいると安心して、頑張っている自分を肯定したかったんです。
倫理上どうなんだと今では思いますが。
作中の炎上芸能人<C>のように、現実の世界でも炎上案件は多数ありますね。
きっと中山のように「クズ」を見てホッとしたい人が日本中にいっぱいいるんだろうなと思います。
でもいくら「クズ」でも日本中から袋叩きにされるなんてたまったもんじゃないですね。
そこで津村さんが示す善後策がすっごくいいんですよ。
次回それを詳しく見ていきたいと思います!



