アラフォー過ぎても人生楽しみたい  本・子育て・人間関係

アラフォー司書です。書評中心に思うところを綴ります。キラキラしてません。

『熊はどこにいるの』~生きづらさを抱える女たちの「性」~

こんにちは。
10月に入りやっとこさ秋らしい気配を感じるようになりましたね。
一年中こんな気候だったらいいのにと心から思います。

 

さて、今回読んだ本は木村紅美さんの『熊はどこにいるの』です。
先日、第61回谷崎潤一郎賞を受賞し話題になりましたね!

かなり以前に新聞のインタビューでこの作品と木村紅美さんのことを知り、「絶対読みたい!」を思っていました。

清冽なルックスの木村さんと印象的なタイトルに一目ぼれしちゃったんです。


『熊はどこにいるの』…う~ん、子供のあどけないつぶやきとも取れるし、姿の見えない何かに怯える心理を表してもいそうだし…。

想像力をかきたてられますが、さっそくどんな作品なのか見ていきましょう!!

 

 


まず作者の木村紅美さんについて

 

1976年兵庫県生まれ。
小学6年生から高校卒業まで宮城県仙台市に在住。
明治学院大学文学部卒業後は会社員やヴィレッジヴァンガードでのアルバイトをされています。
2006年、「風化する女」で第102回文學界新人賞を受賞してデビュー。
2022年、『あなたに安全な人』で第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。
2025年、『熊はどこにいるの』で第61回谷崎潤一郎賞受賞。
過去に2度芥川賞候補に選ばれています。
現在は岩手県盛岡市に住んでおられるようです。

『熊はどこにいるの』には東北に深いゆかりのある木村さんの視点が反映されています。
熊をはじめとする東北自然界の動植物、そして東日本大震災のこと。

 


『熊はどこにいるの』ってどんな話なの?

 

東北のとある山間の集落。
集落の丘の上には、男性から虐げられた女性たちが身を寄せ合って暮らすシェルターのような家がありました。
住人はオーナーで80代の先生、50代の年長者リツ、50代の年下アイの三人です。
男子禁制で一般社会からはほぼ隔絶された暮らしです。
ある時、偶然推定2か月の男の赤ちゃんを拾いこっそり三人で育てることに。

一方、同じく東北の沿岸地域。
元美容師のサキは自宅で出産した赤ちゃんを殺しこっそり海に捨てます。
詳しいことを知らされず赤ちゃん遺棄の際のドライバーをする友人のヒロ。
サキは津波で親しい人たちを失って以来、自暴自棄のような生活を続けていきます。

それぞれが孤独と闇を抱える、リツ、アイ、サキ、ヒロの4人の女性たち。

ユキと名付けられ推定5歳まで育った男児が家出をして保護されたところから、4人の女性たちの人生が交錯していきます。

 


アラフォー的見どころ①「性」、それは生きることそのもの

 

女性、男性、性別、母性、性愛、性欲…。
「性」が付く単語はたくさんあります。
さらにそこから連想される言葉は、スキンシップ、ぬくもり、セックス、妊娠、出産などなど…。

この作品では「性」がとても重要なテーマになっています。

丘の上に暮らすリツは幼少期に叔父から深刻な性虐待を受けたせいで男性というものに強い嫌悪感を持っています。
同居するアイは望んでも子が授からず離婚の末に行き詰って丘の上の家に逃げ込んでいます。

そんな女たちの生活に男児のユキが登場したことで、彼女らの性が満たされていきます。
日々の世話をすることで母性が満たされ、スキンシップや男性器を目撃することで性欲が満たされます。
この「性欲を満たす」という点がのちのち問題となるのですが…。

私は小学生の子供を育てていますが、リツとアイがユキの世話をすることで満たされる姿に深くうなずきました。
子育てはスキンシップの連続です。
抱っこして、手をつないで、一緒にお風呂に入って、寄り添って寝ます。
スキンシップでお互い受け入れ合っているのがわかるんですよね。
同意のうえで満たされる性が愛情だと思います。

人は愛し愛されたいと願うもの。
自分の性を満たすことは生きることそのものだと思います。

私がイメージする「生」は生命のことで、例えば心拍を計測してその有無を確認できるものです。
一方で「性」はもっとウェットで心情が絡んだ計測不可のものだと思います。

私たちが生きている限り付いて回る「性」。
自分ではコントロールしづらい欲求であり、他者との関わりの中で見たされるものでもあります。

私は現在43歳。
今後じょじょに女性ホルモンが低下していく年齢です。
この先私の「性」はどう変化し、それとどのように付き合っていくでしょうか。

作中の4人の女性の「性」に触れ、そんなことを考えました。


余韻を残しつつ、今回はこのへんで。