アラフォー過ぎても人生楽しみたい  本・子育て・人間関係

アラフォー司書です。書評中心に思うところを綴ります。キラキラしてません。

『一心同体だった』~女性ってだけでなんでこんなに生きづらいの~

こんにちは。
びっくりするほど寒いですね!
今週末にかけて冷え込みが厳しくなり、木々の紅葉も進むのではないかと楽しみにしています。


さて、今回ご紹介する本は山内マリコさんの『一心同体だった』です。
まるまる平成30年間を背景に、女性の生き方…というか女性だから見舞われる様々な出来事をじっくり描いた作品です。

ではさっそくどんな作品なのか見ていきましょう♪

 

 


作者・山内マリコさんってどんな人?

 

1980年富山県生まれ。大阪芸術大学卒業後は京都でライター活動を。
2008年、「十六歳はセックスの齢」で第7回R-18文学賞・読者賞を受賞。
作品の多くでは、地方出身女性の閉塞感が描かれています。
近年では『あのこは貴族』が映画化されましたね!

 


それで『一心同体だった』ってどんな話?簡単に

 

1980年生まれの作者山内さんの半生とほぼリンクする形で、1990年から2020年の30年間が描かれた連作短編集です。
登場するのは8人の女性。
前作のわき役が次の主役になるというリレー方式で物語が進んでいきます。
様々なタイプの女性が登場しますが、高校を卒業したあたりからどの女性も”男性にとって都合の良い社会”の洗礼を受けて打ちのめされます。
女性ならば多かれ少なかれ誰しも心当たりのあるエピソードがたくさん描かれていきます。

では次に見どころを探っていきましょう♪

 


アラフォー的見どころ①次々登場する平成カルチャーが懐かしい~!!

 

女性なら誰しも「ふざけんな!」と椅子を蹴って立ち上がりたくなるエピソードが盛りだくさんの本作品。穏やかにまったり読める内容ではありません。
だからこそ一発目はライトな見どころをご紹介。

 

次々登場する平成カルチャーが懐かしいんですよ♪
一部を挙げてみると、

 るるる学園
 みんなのたあ坊
 若者のすべて(ドラマね!)
 天使なんかじゃない
 ミサンガ
 GLAY
 小室哲哉
 ミクシィ 
 エビちゃんOL
 恋するフォーチュンクッキー…などなど。

ああ平成だなあ。
(でもきん注とセーラームーンが出てこないな)
確かに私もこの時代に多感な時期を過ごしていたな。
今平成のカルチャーが巷でブームじゃないですか。
アラフォー世代がちょっと立ち止まって過去を懐かしむ時期になったのかなって感じます。
平成に子育てをしていた方は「そういえば子供が夢中になってたな」と懐かしむことができますよ。


さて今回はこのへんで。
次回は山内さんの鋭い指摘と怒りが炸裂する本作の魅力をじっくり見ていきたいと思います。

 

でもこの時点で私、なんか腰が重いんです~。

なんで??
自分の内面を慎重にチェックすると…。


”男性にとって都合の良い社会”が安定しているんならあえてその岩盤のように手強い価値観に戦いを挑まず知らんぷりすればいいんじゃない?と感じる自分がいます。
でも、自分への差別に対して知らんぷりをしてスルー、は処世術ではありますが、差別が次の世代に持ち越されるだけ。

 

折しも高市早苗氏が固い固い岩盤を壊しました。
女性のみなさん、この『一心同体だった』を読んで、女性の置かれてきた状況と男性側のやりくちを考えてみませんか?

『あつかったらぬげばいい』〜オトナに刺さる絵本〜

こんにちは♪

今日はちょっと箸休めに絵本をご紹介したいと思います。

 

作者はヨシタケシンスケさん。

今や時代の寵児といった存在の作家さんですね。

誰にでもわかる言葉で生きる上での真理を描いていていつもスゴイな〜と思っています。

 

数ある作品の中でも私はこれが一番好き!!

 

 

見開きの左ページで「◯◯だったら」と問いかけ、右ページに「◯◯すればいい」と解決策が示されます。

シンプルにそれを繰り返す、というつくりの絵本です。

 

でね、その問いと解決策がめっちゃ大人に刺さるんですよ〜。

 

「よのなかがみにくくおもえてきちゃったら」

「ひかるがめんをみなきゃいい」

 

とか、

 

「ひとのふこうをねがっちゃったら」

「なみうちぎわにかけばいい」

 (サラリーマンが傘の先で、しね、と書いてい  る)

 

そんな感じで、わかるわ〜!、そうそう!、って膝を打ちたくなるネタばかりが並んでます。

 

イラストも秀逸で、疲れてる大人とか愛想笑いしてる大人とか、リアルに雰囲気が伝わってきます(笑)。

 

毎日頑張って大人やってたら、ポチッて電池切れる時ありません?

私は夕食の片付けを終えたあとにだいたい毎日切れますわ。

そういう脳と体が動かなくなって思考停止になった時に、ボ〜っと眺める本としてぴったりだと思います。

 

 

 

 

『夏日狂想』~続き~

こんにちは。
前回からの続き、『夏日狂想』です。

ではさっそく見どころを探っていきましょう!

 


アラフォー的見どころ②創作に命を懸ける人々がアツイ

 

礼子の付き合う男性はアツイ文学者ばかり。
エネルギーのすべてを創作につぎ込みます。
中でも一番凄まじいのが最後の恋人、橘です。
売れっ子作家になって多忙を極めるのですが、原稿を落としたくないから薬に頼りついには薬物中毒で入院してしまいます。
橘は太平洋戦争中の厳しい言論統制を経験していて、その反動で依頼された原稿はひとつも断りたくなかったのですね。

 

死の床にいる橘が自身の人生を振り返り「創作という地獄にいる人間」と言います。
創作って自分との戦いなんだと思います。
だから、自分と向き合い創作に取り組んでいる人はみんな勇敢だと思うし、作者とその作品に私は敬意を表したいです。

 

木村紅美さんの『熊はどこにいるの』や宇佐見りんさんの『くるまの娘』を読んだ時もそうだったけど、書き手の腹の底からの叫びが聞こえて周囲の音が消えたように感じた経験が何度もあります。

書くことでも、描くことでも、歌うことでも、踊ることでも、なんでもいいです。
自分を表現したいという欲求は大切にされなければならないことです。


そしてアツイ文学者とともに見逃せないのが編集者の存在です!
本作りの陰に編集者の尽力あり、とつくづく感じました。
最初に礼子の文才を見出して書くように強く勧めた女性編集者、長編小説の執筆にずっと伴走した男性編集者。
自分を信じて待っていてくれる編集者がいるから、作家は孤独な戦いを続けていけるのかなと思いました。
作中に描かれる礼子と編集者との絆には胸アツですよ!

 


アラフォー的見どころ③たった独りで自分の仕事に向き合おう

 

『夏日狂想』の一番の見どころは終盤です。
独りになった礼子が信頼できる編集者とともに一歩一歩作家として歩んでいきます。
文才はあるけどそれを作品として昇華させるには地道に原稿用紙を埋めるしかないのです。
生活はカツカツ、でもそれは確かな喜びに満ちた生活だったと思います。

 

大好きな場面があります。
最初の長編小説執筆中、礼子は独りぼっちで大晦日を迎えます。
”独身中年女で生活に余裕もなくなんて哀れなんだろう”が世間的な評価でしょうか。
でも礼子は心の中で
 「寂しいか、と言われれば寂しいような気もしたけれど、今、抱えている原稿のほうが心配だった」
と考えます。
いいですね~!
自分のやるべき仕事に黙々と取り組む姿が清々しいです。
夢中になれるものがあれば、性別とか年齢とか肩書とかもろもろの属性なんてどうでもいいじゃないですか。
自分のやるべき仕事から目を逸らさないって、しんどくもあるけど幸せなことだと思います。

 

そんな礼子の姿は現代の女性への強いエールになると思います。
今を生きる女性は、働かなきゃいけないし、子供がいたらワンオペだし、家事も家族の世話も結局私がしなきゃならないし、孫育てを任される場合もあるし、本当に忙しいですよね。
そんな中、自分のライフワークを持っている女性も多いと思います。
礼子は必死に自分の食い扶持を稼ぎながら原稿を埋めます。
そんな礼子の姿は、同じように日々生活に追われながらも自分のライフワークを諦められない現代の女性たちを勇気づけてくれるはずです。

 


強く生きる女性の姿に勇気をもらって今回はこのへんで。

次回も引き続き女の生き方を描いた作品を読みたいと思います!

 

 

『夏日狂想』~女の人生、独りになってからが本番~

こんにちは。
10月に入って数日経ちましたがけっこう暑いですよね…。
なんか毎回暑い暑いばっかり言ってる気がしますが(汗)。
毎晩風呂上りに子供の髪を乾かしますが、その時の暑いこと暑いこと。
耐えられずネッククーラー付けますからね。

 

さて、いつまでも暑い暑い言ってても仕方ないので今日も元気に本を紹介します!

 

今回読んだ本は窪美澄さんの『夏日狂想』です。
”かじつきょうそう”と読みます。
明治から昭和を生きた作家、長谷川泰子をモデルとした女性の激動の生涯を描いた作品です。

前回『熊はどこにいるの』で女の人生について様々に考えさせられました。
その流れでこの作品を選びました。

ではさっそくどんな作品なのか見ていきましょう♪

 

 


まず作者の窪美澄さんについて

 

1965年、東京都稲城市生まれ(わりと近くに住んでいたことがあるのでちょっと親近感♪)。
ご実家は酒屋さんでしたがお父様の自己破産の影響で短大を中退し就職。
出産後はフリーランスの編集ライターとして活動されました。
2009年に「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞しデビュー。
「ミクマリ」収録の『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞受賞。
2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。
2019年、『トリニティ』で第161回直木賞候補、第36回織田作之助賞受賞。
2022年、『夜に星を放つ』で第167回直木賞受賞。

44歳のデビューから怒涛の展開ですね!

 

 

『夏日狂想』ってどんな話?

 

先述のとおり、明治生まれの作家、長谷川泰子をモデルとした女性の生涯を描いた作品です。
主人公の名は中野礼子。
女性の自由意思は認められず、結婚して子供を産むことが決められた道だった明治時代。
女優を志した礼子は故郷の広島を脱出して東京、京都と流れていきます。
そこで出会った年下の水本(詩人の中原中也がモデル)と片岡(文芸評論家の小林秀雄がモデル)と三角関係に陥る礼子。
やがて破綻する三人の関係。
太平洋戦争を生き延びた礼子はこれまでの経験をもとに、自らも書くということに向き合っていきます。

 

10代20代の若い礼子の衝動的で激しい生き方には目を見張るものがありますが、なんといってもアラフォーの私にとっての見どころは一人になってからの礼子の生き方!
「書く」ということに真摯に向き合い、少しずつ少しずつ周囲の支持を得て、死ぬまで作家として歩み続けます。

ライターから出発して44歳でデビューした窪さんが礼子(≒泰子)にシンパシーを感じたのでは、と思わされます。

 

全く時代背景の違う女性の話ではありますが、アラフォー以降でも挑戦したいことがある女性にとって強いエールとなる作品だと思います!

 


アラフォー的見どころ①男と同じ土俵に上がる女、礼子

 

礼子は美人です。
だから当然モテるし恋愛の機会に恵まれます。
詩人の水本、文芸評論家の片岡の二人を相手に激しい愛憎を繰り広げて別れた後は、作家志望の橘と新たな恋愛を始めます。
おっと、礼子の惹かれる男性には”文学の才能がある”という共通点がありますね。
才能ある男性に出会うとどうしても惹かれてしまうんですね。
でもどの男性とも関係が破綻して別れを選んでいます。


なぜなんでしょうか?


50代を迎えた礼子と片岡が久々に語り合うシーンがあります。
いまや作家として歩む礼子に片岡は、

 「誰もが、そんなことができる女だと、思ってはいなかった。(中略)男たちを翻弄する女だと、僕も、まわりの人間も君のことを思い込もうとしていた。(中略)正体を掴みきれない君のことが怖かったんだ、皆…」
と語りかけます。


そう、周囲の男性は、従順ではなく男と同じ土俵に上がってくることを匂わせる礼子を恐れていたんですね。
だから関係が破綻したのでしょう。


このシーンを読んで、自分の傷とも言えないような古傷が手当てされたような気分になりました。
思春期の頃から現在に至るまで、私は男性ウケしない(する必要は全くありませんが!)し、それどころか基本的に男性から回避される女だと感じています。
自立心が強く男性に甘えるという考えが弱いからだと思います。
そのせいで若い頃は「どうせ私は」と思っていました。
でもアラフォーで子育てにまい進する今となっては、それも過去の甘い古傷に過ぎません。

 

恋愛市場から降りたあと「書くこと」に真摯に向き合う礼子が清々しいです。

 

私も無事に恋愛&結婚市場から降りることができて本当に良かった。
これからは「文学作品の魅力を伝える」というライフワークに静かに取り組んでいきたいです。

 

それでは今回はこのへんで。

 

『熊はどこにいるの』~前回の続き~

こんにちは。
前回からの続き、『熊はどこにいるの』です。


アラフォー的見どころ②死を選ばない限りは生きていくしかない

 

我ながら重苦しいことを言うなあと思いますが(笑)。
4人の女性たちの姿を追っていてそう感じました。

4人それぞれ孤独と闇を抱えていますが、特に50代のリツが印象的でした。
前述の通り、リツは幼少期に叔父から性虐待を受けたせいで全ての男性を拒絶しています。
そればかりか同性とも心許せる関係を作ることができません。
辛く寂しい生き方ですよね。
でも今さらどうすることもできないですし、過ぎた時間は取り返しがつきません。

そんなリツの心の支えは、無心になれるお菓子作りと狩猟、そして狩った獲物の解体です。

ほんと、人はどうにもならない自分をどうにか保つ術を持ちながら、なんとか生きていくしかないんです。
この点はめちゃくちゃわかります。

人生ってオセロみたいじゃないですか?
時間の経過とともに流れが固まって選択肢が少なくなっていく。
(でも黒だと思っていたものが一気に白に反転する瞬間もありますね!!)

リツがまじめに畑仕事に励み、家事をこなし、きちんと生活している姿が印象的です。
世の中の大半の人はそうなのではないでしょうか。
口をつぐみ生活している。
私も含め、まじめに日々を生きている大人はみんな偉いと思います。

 


アラフォー的見どころ③一緒に過ごせることは実は奇跡

 

男子禁制の丘の家に住むリツとアイ。
偶然男の子の赤ちゃん(ユキ)を拾い、手放すことができずにそのまま推定5歳まで養育してしまいます。
いやいや、普通に犯罪でしょ、その判断おかしいでしょ、と言いたくなりますが。

でも新生児だったユキにぴったり寄り添い成長を支援するリツとアイは、確かにユキの家族でした。
夜泣き、哺乳瓶の消毒、ミルクの後のげっぷ、つかまり立ち、離乳食、トイレトレーニング、イヤイヤ期…成長の過程にずっと付き添います。

実は物語の冒頭で、推定5歳のユキが失踪します。
ユキの成長の様子がかなり細かく描かれているからこそ、ユキが去ったあとぽっかり穴が開いたように思えて切ないんですよね。

現在私も小学生の子供を育てていますが、いずれ子供は巣立って行きます。
毎日当然のようににぎやかに過ごしていても、いつか一人家に残る時が来ます。

リツ、アイ、サキ、ヒロ、の4人の女性たちもお互いの人生がひととき交錯する時があっても、やはり離れていき、最後にヒロだけが残されます。

人はたとえ親子であってもそれぞれの人生を生きていくしかないのでずっと一緒にはいられません。
それぞれ持って生まれたものや抱えている事情は違いますからね。
だからこそひととき一つ屋根の下で暮らせることは奇跡なのではないかと思います。

ユキを育てるリツとアイの姿を見て、人が育っていくことと家族が共に暮らすことの切なさをしみじみ感じました。

日々の忙しさに「キ~!!」ってならないで、その尊さを感じられる余裕を持ちたいです。

 

 

最後にまとめ

 

いや~『熊はどこにいるの』、心震えましたね。
気持ちが明るくなるストーリーでは決してありません。

でも木村さんは書かないと生きていけないくらいの切実さをもってこの作品を書いたのではないでしょうか。
木村さんの身の内からの叫びのようなものを感じて圧倒されました。
以前読んだ宇佐見りんさんの『くるまの娘』に似た衝撃でした。

木村紅美さん、この先も見逃せない作家さんです。
木村さんの言葉に今後も耳を傾けていきます。

 

 

 

『熊はどこにいるの』~生きづらさを抱える女たちの「性」~

こんにちは。
10月に入りやっとこさ秋らしい気配を感じるようになりましたね。
一年中こんな気候だったらいいのにと心から思います。

 

さて、今回読んだ本は木村紅美さんの『熊はどこにいるの』です。
先日、第61回谷崎潤一郎賞を受賞し話題になりましたね!

かなり以前に新聞のインタビューでこの作品と木村紅美さんのことを知り、「絶対読みたい!」を思っていました。

清冽なルックスの木村さんと印象的なタイトルに一目ぼれしちゃったんです。


『熊はどこにいるの』…う~ん、子供のあどけないつぶやきとも取れるし、姿の見えない何かに怯える心理を表してもいそうだし…。

想像力をかきたてられますが、さっそくどんな作品なのか見ていきましょう!!

 

 


まず作者の木村紅美さんについて

 

1976年兵庫県生まれ。
小学6年生から高校卒業まで宮城県仙台市に在住。
明治学院大学文学部卒業後は会社員やヴィレッジヴァンガードでのアルバイトをされています。
2006年、「風化する女」で第102回文學界新人賞を受賞してデビュー。
2022年、『あなたに安全な人』で第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。
2025年、『熊はどこにいるの』で第61回谷崎潤一郎賞受賞。
過去に2度芥川賞候補に選ばれています。
現在は岩手県盛岡市に住んでおられるようです。

『熊はどこにいるの』には東北に深いゆかりのある木村さんの視点が反映されています。
熊をはじめとする東北自然界の動植物、そして東日本大震災のこと。

 


『熊はどこにいるの』ってどんな話なの?

 

東北のとある山間の集落。
集落の丘の上には、男性から虐げられた女性たちが身を寄せ合って暮らすシェルターのような家がありました。
住人はオーナーで80代の先生、50代の年長者リツ、50代の年下アイの三人です。
男子禁制で一般社会からはほぼ隔絶された暮らしです。
ある時、偶然推定2か月の男の赤ちゃんを拾いこっそり三人で育てることに。

一方、同じく東北の沿岸地域。
元美容師のサキは自宅で出産した赤ちゃんを殺しこっそり海に捨てます。
詳しいことを知らされず赤ちゃん遺棄の際のドライバーをする友人のヒロ。
サキは津波で親しい人たちを失って以来、自暴自棄のような生活を続けていきます。

それぞれが孤独と闇を抱える、リツ、アイ、サキ、ヒロの4人の女性たち。

ユキと名付けられ推定5歳まで育った男児が家出をして保護されたところから、4人の女性たちの人生が交錯していきます。

 


アラフォー的見どころ①「性」、それは生きることそのもの

 

女性、男性、性別、母性、性愛、性欲…。
「性」が付く単語はたくさんあります。
さらにそこから連想される言葉は、スキンシップ、ぬくもり、セックス、妊娠、出産などなど…。

この作品では「性」がとても重要なテーマになっています。

丘の上に暮らすリツは幼少期に叔父から深刻な性虐待を受けたせいで男性というものに強い嫌悪感を持っています。
同居するアイは望んでも子が授からず離婚の末に行き詰って丘の上の家に逃げ込んでいます。

そんな女たちの生活に男児のユキが登場したことで、彼女らの性が満たされていきます。
日々の世話をすることで母性が満たされ、スキンシップや男性器を目撃することで性欲が満たされます。
この「性欲を満たす」という点がのちのち問題となるのですが…。

私は小学生の子供を育てていますが、リツとアイがユキの世話をすることで満たされる姿に深くうなずきました。
子育てはスキンシップの連続です。
抱っこして、手をつないで、一緒にお風呂に入って、寄り添って寝ます。
スキンシップでお互い受け入れ合っているのがわかるんですよね。
同意のうえで満たされる性が愛情だと思います。

人は愛し愛されたいと願うもの。
自分の性を満たすことは生きることそのものだと思います。

私がイメージする「生」は生命のことで、例えば心拍を計測してその有無を確認できるものです。
一方で「性」はもっとウェットで心情が絡んだ計測不可のものだと思います。

私たちが生きている限り付いて回る「性」。
自分ではコントロールしづらい欲求であり、他者との関わりの中で見たされるものでもあります。

私は現在43歳。
今後じょじょに女性ホルモンが低下していく年齢です。
この先私の「性」はどう変化し、それとどのように付き合っていくでしょうか。

作中の4人の女性の「性」に触れ、そんなことを考えました。


余韻を残しつつ、今回はこのへんで。

 

『草枕』続き

こんにちは。

前回の続き『草枕』です。
それではさっそく見どころを探っていきましょう!!


アラフォー的見どころ③こんなにガチで笑い取ってくる文豪っているのか

草枕』の魅力ってたくさんありますが、絶対漱石先生って視力2.0だったでしょ、ってくらい自然描写が緻密で本当に美しいです。
主人公が真夜中に目覚めたときの、幽玄の世界をさまようような場面も、好きな人はすごく好きだと思います。

でね、ここからなんです。
そうやって読む者を心酔させときながら、個性強めのチョイ役たちが出てくる場面が俗っぽくておもしろ過ぎなんです!!
もうコントを見ているかのような活写っぷり。

主人公は旅行先の温泉街で床屋に行きます。
そこの親方がとんでもない男で、酔っ払いながらカミソリ使うわ、皮膚傷つけるわ、頭皮マッサージは脳しんとう起こすほど乱暴だわ。
主人公はクレームを言うこともできず穏便に済ませようとしますが、親方が鈍感すぎてNOが通じずなされるがままです。

しっちゃかめっちゃかな状況をあくまで香り高い文体で描くもんですから読んでるこっちは涙出るほど笑いましたね。

床屋の親方と寺の小僧さんとの、言葉のどつき合いみたいな丁々発止のやり取りも笑えました。

漱石先生、江戸文化が色濃く残る慶応3年の新宿生まれ。
幼少期はお小遣いを握りしめて近所の寄席に好んで通ったそうです。
なんか可愛い!
その成育環境が、俗っぽくて賑やかな場面を描くユーモアの下地になったのではないでしょうか。


漱石先生の個人的思い出

私なんぞが師事したわけでもないのにさっきから「漱石先生、漱石先生」と呼ばせていただいております。
私、漱石先生には特別思い入れがあるんです。

遠い昔、小学三年生の時のことです。
生まれて初めて「本を読んで泣く」という体験をしたのが、図書室で借りた漱石先生の伝記を読んでのことでした。
その時の感動は今も胸に刻まれています。

大人になってからどうしてもその伝記を手に入れたくなって、ネットで調べまくって入手しました。
確か栃木の古本屋さんだったかな。
今でもこの本は宝物です。

東京に住んでいたころ、幸運にも雑司ヶ谷霊園漱石先生のお墓にお参りすることができました。
漱石先生の親友として知られる政治家、中村是公氏のお墓がわりと近くにあるのを見つけ、すごく温かい気持ちになったことを覚えています。

 

↑これが宝物の伝記です♡♡

 

では今回はこのへんで失礼します。

次回は何を読もうかな。