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アラフォー司書です。書評中心に思うところを綴ります。キラキラしてません。

書評『現代生活独習ノート』~頑張れ!!ヘロヘロの現代人☆~

こんにちは。
いよいよ冬らしく冷え込んできましたね。
空気が張り詰めて寒いです。

勤務先の中学校では、冬休み突入前に延滞図書の取り立てをせねばと督促状の作成に励んでおります。
それでも毎年回収しきれず借りパクが何件か発生するんですけどね。

 

さて以前に読んだ『うそコンシェルジュ』の津村記久子さん、私の心に気持ちよくフィットしたので今回も読んでみました。
今回読んだのは『現代生活独習ノート』です。
2021年に単行本で刊行され、今年文庫本で出ました。

 

 

津村記久子さん(*^-^*)
めちゃくちゃ好きです。
作品の主人公はだいたい真面目で冷静に現実を直視するタイプ。
そんな主人公の目を通して淡々と描かれる周囲の人や状況がたまに吹き出すほど面白いんです。
じっと観察しているとだいたいの人って何かしら可愛げやおかしみがあるものなのかも、と思えます。

では今回読んだ『現代生活独習ノート』の見どころをみていきたいと思います♪

 


『現代生活独習ノート』ってざっくりとどんな話?


全8編からなる短編集です。
イギリスが舞台の作品や近未来が舞台の作品も収録されていますが、多くは現代日本の普通の会社や普通の家庭が舞台になっています。
ネット上に氾濫する情報にさらされてへろへろに疲れた現代人を描いた作品が二編あり、格別に面白かったです。
どの作品も、どこにでもいそうな登場人物たちの生活に最後にほんのちょっとだけ光が差すラストがすごくいいです。


あと、表紙と挿絵が秀逸です!
”少し、いや相当疲れている人”が多数登場する短編集のため、描かれるどの登場人物も脱力感がすごくて、アホ毛立ってたり魂抜けてそうだったり(笑)。
イラストを見るだけで数分間は和めますので、疲れを感じている方は一見の価値あり!です。
ちなみにイラストは同じく大阪出身の人気漫画家・木下晋也さん。

 

(↑イラストこんなかんじ。)

 


アラフォー的見どころ①やっぱ人の営みや息吹に触れるとほっとします


ネットのせいでへろへろになってしまった主人公その①。

「レコーダー定置網漁」の主人公「私」は会社員。
新卒採用において学生のSNSチェックを担当しており毎日毎日膨大な量の情報にさらされ、へろへろに疲れてしまいます。
自らの危機を自覚した「私」は12日間のリフレッシュ休暇を取得します。
でも「私」曰く”リフレッシュする気力自体が残っていなかった”のです。
そこはかとなく漂うユーモアにニヤリとしてしまいますが、「私」はけっこう危険な状態なんです。
自宅から一歩も出られずカーテンを閉め切って食事もロクにしません。
ただ横になってよみがえってくる膨大な情報の記憶に苦しんでいます。

ヤバくないですか…?
「私」、一人で大丈夫なの…?

そんな「私」ですが真っ暗な部屋の中で撮り溜めておいた『刑事コロンボ傑作選』を鑑賞し始めます。
そして偶然録画されていた料理番組や旅番組などを毎日少しずつ鑑賞するなかで、やっとフリーズしていた心が動き出します…。

「私」が偶然鑑賞することになる料理番組や旅番組などですが、メンツが決まっていて、女性アナウンサーの松田さんと東本さん、料理家の加賀美先生、気象予報士の梨川さんの4人なんです。
深夜番組だからなのか、なんだか隠しきれない手作り感が溢れています。
出演者たちはカメラの前で一生懸命仕事をこなしますが、ふと私生活や本音や素の表情が垣間見えます。
そんな一期一会と言っていいくらいの人々の生活感に触れて、「私」はやっと人間らしい感情を取り戻します。
生身の人間と触れ合ったわけでもないのに不思議ですが、スクリーンを通してでも人の営みや息遣いって伝わるものなんですね!

出演者の松田さんたちはまさか自分たちがヤバい境地にいる女性一人を救い出したなんて思ってもいないでしょう。
夏目漱石曰く”とかくに人の世は住みにくい”は事実だと思いますが、一方で人の世に住んでいるからこそ人に救われる、も事実ですね!


では今回はこのへんで。
次回も引き続き『現代生活独習ノート』を見ていきたいと思います。