アラフォー過ぎても人生楽しみたい  本・子育て・人間関係

アラフォー司書です。書評中心に思うところを綴ります。キラキラしてません。

書評『橘の家』続き

こんにちは。
前回からの続きで『橘の家』です。
妊娠を巡る女性の苦悩がなまなましく描かれた作品です。

ではさっそく見どころを見ていきましょう!!

 


アラフォー的見どころ②男性って、もしかして女が怖いの??

 

本作の注目すべき点は、妊娠を望む女性に対する男性側の気持ちや立場が描かれている点です。
どんなふうに描かれているかざっくり言うと、”男性から見たら産む女性は畏怖の対象”といったところでしょうか。

一番印象的な男性登場人物は、守口家の長男である豊です。
母の秋江と妹の恵実が橘の木を守る過程でどんどん評判が広まり、妊娠を望む女性たちが家に押し寄せます。
その女性たちが発する圧や漏れ聞こえてくる性行為のノウハウに耐え切れずに、豊は実家から距離を置くことになります。
そりゃあ思春期に家がそんな状況だなんて頭がおかしくなりそうですよね。
特に性に関してはきわめてプライベートことなので、周囲に引っ掻き回されることなくゆっくり理解を深めていきたいところです。
ちなみに秋江の夫・伸一も次第に家から足が遠のき、女を作って出て行ってしまいました。
なんか皮肉だなと思います。

 

男性はセックスすれば子供ができると理解しています。
でもセックスと妊娠は直結しておらず、二者の間には確率や女性と男性の年齢やセックスのタイミングや身体上の問題などが横たわっているわけです。
当の女性は身をもって理解しています。
だから人間のコントロールが効かない分野を橘の木にすがるわけですが…。
この熱量が男性の目には怖く映るようなのです。
「セックス⇒妊娠」という流れに対する解像度が男性と女性では月とスッポンほど違いがありそうです。

 

あまたの女性の妊娠に尽力してきた恵実。
皮肉にも彼女は男運がないまま年を重ね、46歳の現在ヒモのクズ男と同棲し必死に妊活します。
ヒモのクズ男=塚地くんは本当にやることなすこと全部クズなんですが、恵実からは「種馬」扱いされてそれも気の毒です。

 

女性は産む機械ではないし、もちろん男性だって精子を提供する機械じゃありません。
ああ、生殖って難しいですね。
両性がよくよく話し合って合意を形成していくしかないのですが…。

 

 

アラフォー的見どころ③国よ、マジでしっかり性教育してください

 

いま、10年に一度の改定に向けて議論が進んでいる学習指導要領。
現行の学習指導要領にはいわゆる「歯止め規定」と呼ばれるものがあります。
それは、
「人の受精に至る過程は取り扱わない」(小5理科)
「妊娠の経過は取り扱わない」(中1保健体育)
というものです。
この規定が学校現場で「性交、避妊、性的同意について触れてはいけない」と誤認される原因になるとして、規定の削除を求める署名が文部科学省に提出されました。
かの尾木ママさんも賛同されています。

 

このニュースをネットで読み、めっちゃタイムリーだな!と思いました。

 

『橘の家』に話を戻すと、繰り返し描かれる女性たちの苦悩は夫や義両親をはじめとする周囲の無知が原因なんです。
妊娠の可否の全責任を女性に押し付けるなんて非科学的ですよね。
男性にも不妊症があるし、精子も加齢により老化するし、精子が性別を決定するため男女産み分けの責任を女性に求めるのは間違い。
このような事実を知らないガヤが子孫繁栄の名のもとに女性を追い詰めるなんて胸糞悪くて吐きそうです。

 

意味不明な思い込みで未来ある女性を苦しめないためにはどうすればいいのか?
性教育しかないでしょう。
国が責任持って学校で妊娠出産について取り扱ってください。
現場の先生で難しければぜひ産婦人科医や助産師などのプロを招いて質の高い授業をしてください。
10代の出産がハイリスクであること、妊娠にはタイムリミットがあること、新生児の世話が過労死レベルであることなど、必要な知識も伝授してください。

 

現在、性教育は各家庭に任せられている状況です。
私は子供が被害者にも加害者にもならないために、本などを用いて様々なことを伝えています。
でも子供の話を聞いていると、すでに成人向けコンテンツを自由に視聴している男子児童もいて自慢げに吹聴しているとのこと。
怖すぎます。
家庭任せじゃダメだと思います。


『橘の家』を通して妊娠にまつわる女性の苦悩を見てきました。
ふと、この物語、性教育のお粗末な国でしか成立しないんだろうなと感じました。

では、今回はこのへんで!