こんにちは。
前回、「母親」というものについて考えてみました。
今回はその勢いに乗って、「家族」について考えてみたいと思います。
…って自分で言っておいて、すでに気持ちがどんより重いです。
これまでに何度か言及していますが、私の育った家庭は男尊女卑の考えに染まり切った歪んだ集団でした。
生きる力を養うというより、逆に生きる力を吸い取られるような場でした。
思い出すとゲッソリ…。
そんな空気を吸いながら、かつて未成年だった私は必死に生きていました。
私を長年苦しめた父は50代で若くして亡くなりましたが、なんと亡くなった後も夢に出てきて私を苦しめ続けました。
でも2年前にやっと父を許すことができ、悪夢も見なくなりました。
そして母。
昔からどこかものごとを認識する力が弱く、守るべき時に未成年の我が子をしっかり守れない人でした。
その恨みはいまだに忘れられません。
でも彼女も今年で75歳。
急速に老いが進んでいて、母の人生の終焉が近づきつつあると実感しています。
そんな私が今回読んだ本はこちら、「くるまの娘」です。

作者はどんな人?
作者は宇佐美りんさん。
1999年生まれで現在26歳。若いですね!
2019年「かか」で文藝賞を受賞してデビューされます。同作品で三島由紀夫賞を最年少で受賞されました。
2021年には「推し、燃ゆ」で芥川賞を受賞され話題になりましたね。
ネットでお姿拝見しましたが、さすが20代らしい爽やかなルックスの方です。
「くるまの娘」ってどんな話?
主人公は、かんこ、という名の女子高生です。
父母、結婚して独立した兄、進学のため家を出た弟、家族はこの5人です。
冒頭からいかにも体調が悪そうなかんこの様子が描かれます。
自殺未遂をしたかと思われる一文もあり、のっけからぎょっとします。
どうやらかんこは尋常ではない何かを抱えていそう…。
そこに、父方の祖母危篤の連絡が入り、かんこと父母は車で遠方にある父の実家に向かいます。
その道中、かんこの父が母親から愛されず絶望のなか生きてきたこと、父がかんこに発作のように暴力をふるうこと、母が脳梗塞の後遺症に苦しんでいることなどが読者に明かされていきます。
祖母の葬儀を経て、家族の車には兄と弟も加わり旅が続きます。
車内という密室の中で、家族一人一人のどうにもならない感情がぶつかり合います。
果たしてかんこ一家に救いの時は訪れるのでしょうか?
見どころは!?
日本の家族というものに対する、宇佐美さんの観察眼と分析力がスゴすぎます。
家族に傷付いた経験のある人なら、ハッとさせられる描写に必ず出会えるでしょう。
私が一番しんどかった高校生の頃、臨床心理学の本の中で、
「幸せな家族はだいたい同じ理由で幸せだが、不幸せな家族はそれぞれの理由で不幸せだ」
という言葉に出会いました。
でも「くるまの娘」を読んでみて、不幸せの理由はそれぞれ違っても、根底にあるものってけっこう共通してるんじゃないかなと感じました。
例えば、不幸が次世代に引き継がれていること、強い父のメンツを立てる弱い母、家族をつなぎとめようと右往左往する子供…。
不健全な家族の構図って似てませんか?
問題は解決しなくても、自分の気持ちや自分の状況を正確に言葉にできれば、気持ちは楽になります。
「くるまの娘」にはそんな力があります。
かつて言葉にできなかった苦しいモヤモヤのメカニズムをかなり正確に解説してくれている箇所がたくさんあり、私は救われた思いがしました。
さて、作品への期待を残して今回はここまでにします。
次回はさらに詳しく見どころに迫っていきたいと思います。
かんこたち一家に春が来ることを信じて…。