こんにちは。
のっけから質問ですが、みなさんはどんな中学時代を過ごしましたか?
友達付き合いや部活を楽しんで元気に過ごせていましたか?
私の中学時代ははっきり言って暗~いものでした。
自意識過剰で朗らかに同級生と接することができず、本ばかり読んでいました。
中二病に罹患した女子の強い味方になってくれる作品です(笑)
思春期真っただ中だった中学時代、楽しかった人もしんどかった人も、
素敵な大人になった今、一緒にあの時代を振り返ってみませんか?
ご紹介する作品は1991年刊行の「夏のこどもたち」です。
作者は川島誠さん。1956年生まれの作家さんです。
少年の性を真正面から描く青春小説で名高い方です。
ではさっそくどんな作品なのか見ていきましょう♪

★ざっくりどんな話なの?主人公はどんな子?
主人公は中学3年生の朽木くん。
成績優秀です。
幼少の頃、親の不注意で左目を失い、義眼を入れています。
それを周囲に隠すことなく、体育の授業でうっかり落とした義眼を水道でジャブジャブ洗ったりする。
まことにクールで堂々としてますね。
思春期真っただ中の中三男子にしてはちょっとクール過ぎ?
これは一部の女子が強烈に惹かれるタイプだと思います。
さてそんな朽木くんの主に中学生活が描かれます。
恋愛あり、家族問題あり、学校での委員会活動あり…。
特筆すべき点は思春期男子の性欲や性に関する行動をはっきりと描いていることです。
読めば「タブーなく描いているな」と感じる方が多いと思います。
ですので、はっきりとした性表現は苦手…という方にはお薦めできませんのでその点は最初におことわりさせていただきます。
★あらすじと見どころ!
タイトル通り、季節は夏。しかも舞台は明るい海岸沿いの街。
ちょっとイメージするだけで、青春にピッタリの爽やかな風景が広がりますね!
朽木くんはあるきっかけで校則委員をやることになります。
そこで出会ったのが中井さんという女子。率直に物申すタイプの子です。
短い会話を交わしてすんなり意気投合した二人。
こういう恋愛の始まり方って若さのなせる業ですかね。
大人って相手の反応を見ながら慎重に距離詰めて行きますもんね~。
夏休み中の二人の可愛いデート場所は徒歩圏内にある海水浴場です。
二人は夏休み中デートを重ねますが、その中で印象的な場面があります。
中井さんが
「空の色が変なのよ。そう思わない?」
「海に行きましょうよ。心配」
と朽木くんに電話して二人で海に向かうのです。空は夏らしい青色なんですが、二人とも昨日と違う空の変化に気づきます。そうです、今日から秋になったのです。
夏休みは残っていても、夏は終わったことを体で感じたのです。
思春期って本当に感受性が鋭いです。自分の目の前で、耳元で季節の変化を感じます。
自分が何かにシンクロしてるみたいな気がしてきます。
私の場合は夏じゃなくて冬でした。今でも中学時代に体感した、冬のキンと冷えた空気やシンと静かな風景を思い出せます。
こういう記憶、今となっては宝物です。
朽木くんはクールなので一人称の語り口も実に淡々としています。
それと対比してヒートアップしていくのが校則委員会メンバーたちの活動です。
委員会の中で意見が対立して、会は分裂しちゃいます。
「自分の周辺は騒がしいけど、自分の内面は静か」って青春あるあるだと思います。
そしてそれが極まるのが、朽木くんと中井さんの性行為が描かれる場面です。
導入部分だけさらりと描かれ、ページをめくって見開き2ページ分は白紙。
本当にうまい表現だと思いました。
中学生の性行為については人それぞれ意見がかなり分かれると思います。
私はわりと保守的な人なので、親の立場からすれば「子供が何やってんのよ(怒)‼」ってなりますけどね。
★思春期男子ってこんな感じ⁉仰天展開に…
朽木君はとあることがきっかけで糸が切れた凧みたいになってしまいます。
でも、なんと「深夜に担任の先生のマンションに侵入して先生を強姦する」という計画を立てて一気に元気になるんです。「ワクワクしてくる」と言っています。
良識のある大人からしたら異常ですよね。
その時の朽木くんの独白が秀逸です。
「もしかしたら、ぼくは、戦争に行きたかったんじゃないかと考える。戦争があったなら、どんなに幸せだろう。他のことは何も考えずに、指示されるまま戦っていればよい。機械になればいいんだ。判断する必要はない」
戦争が幸せなわけないですね。でもここでは通常の倫理観はひとまず横に置いておきたいと思います。
朽木くんは思春期男子の性の衝動発散の代替手段として戦争をイメージしています。
その裏には「生きている手ごたえが欲しい」「ぬるい現実ではなく強烈な現実に直面したい」「力を発散したい」という欲求が隠れていると思います。
空の変化から秋の訪れを感じ取ったように、朽木くんの鋭くなった感受性は五感への強い刺激を求めているのではないでしょうか。
そう考えると、思春期の子たちが好むカルチャーと大人が好むカルチャーに違いがあることも納得できる気がします。
★ひりつく青春の感性を永久保存!大人にこそ読んで欲しい♪
読んでみて、主人公と性別は違えど、否応なしに自分の中学生時代を思い出しました。
自分一人の意志で行動できる範囲は限られていて、その範囲内で過ごすしかない時代。
そのくせ感受性は鋭くなりときに思考は熱を持ってヒートアップします。
疾風怒濤の時代とはよく言ったものです。
自分よ、今さらながら本当によく思春期を乗り越えたな。
この本はまさに今思春期を過ごしている子供たちが読んでも面白いでしょうし(強烈な印象を受けると思います)、必死に思春期を乗り越えた大人にもおススメしたいです。
かつての思春期を思い出し、その思い出にこれまでと違った意味付けができたら、きっとより良い明日を生きていけるのではないでしょうか。