アラフォー過ぎても人生楽しみたい  本・子育て・人間関係

アラフォー司書です。書評中心に思うところを綴ります。キラキラしてません。

「ゆゆのつづき」ー成熟してから再会する10代の自分ー

身体的にも精神的にも成熟し余裕ができたいま、少女の頃のきらめく日々を追体験できたら…。

 

こんにちは。

アラフォー司書のミキです。

40歳を超えて、日々子育てと仕事にきゅうきゅうしています。

ものがわかるようになってきた娘からは「お母さん毎日お料理大変だから手伝ってあげる」と心配な気持ちをにじませた言葉をかけられ反省することもしばしば。

でも一方でアイデンティティがぐっらぐらで不安定だった若い頃に比べると、圧倒的に内面が安定した自分がいます。

この点では年を重ねて本当に良かったなと感じています。

身体的にはまだまだ頑張れる、精神的にも余裕がある。

けっこう幸せな今、自分がキラキラ輝いているようで楽しかった小学生の頃を追体験できたら…。

「あの頃の自分をもう一度」…。今回ご紹介する本は、誰もが一度は憧れる一種のタイムスリップストーリーです。

 

★ざっくりどんな話なの?主人公はどんな人?

主人公は杉村由々、50代半ばの翻訳家です。

夜を徹して仕事をし一冊の短編集を訳し終えた朝、仕事場のすみにあった古い楽譜を見つけ、何気なくピアノを弾いてみます。

するとその曲が呼び水となって、小学5年生の夏休みのある一日がありありとよみがえってくるのです。

    ”あの日ときたら、さんざんだった。でもあの夏の日は……

    いちばんわたしらしいわたしだったんじゃないだろうか……”

そんなふうに回想する夏の日に一体どんなことがあったのでしょうか?

前半は小学5年生のゆゆの夏の一日が描かれます。

そして後半は現在の由々が少女時代を追体験する様子や、心境の変化、キーパーソンとなる若い男性龍彦さんとの交流などが描かれます。

それではさっそく物語の内容と見どころを見ていきましょう!

 

★見どころ!

作者の高楼方子さんは絵本や児童書の分野で膨大な仕事をされている方です。

1955年函館生まれ、札幌在住だそうです。路傍の石幼少年文学賞赤い鳥文学賞など受賞歴多数。「小公女」の翻訳やエッセイも手掛けていらっしゃいます。

(「時計坂の家」は傑作なのでめちゃくちゃおススメです‼)

そんな高楼さんの作品なので当然児童書なのかと思いきや…。

いやこれは完全にアラフォー女性の心に刺さる内容でしょ!

 

由々の生活に派手さはありませんが地に足が着いていてとても豊かです。

長年翻訳家として仕事をし版を重ねる訳書もあります。夫との関係も良好。

一人で仕事に打ち込める仕事場もあります。

これって多数の女性の憧れじゃないですか?

自分の得意分野で仕事ができて、大金持ちじゃないけど経済的に余裕があって、心を許せる家族や友人がいて。

一人息子はすでに社会人になって独立しているので、心の赴くままに本を読んだり街歩きをする時間の余裕もあります。

この、心身ともに自由が確保されている状況、私たちの小学生時代と似てませんか?

50代半ばで訪れた「余白」ある生活が、少女時代の追体験を可能にしたのではないかと思います。

ひょんなことから親しくなる20代の男性龍彦さんは就職浪人中で同じく「余白」のある生活をしています。

この物語の中で龍彦さんは重要な役割を果たしますが、二人の波長が偶然合ったからこそ距離が縮まったと思わずにいられません。

 

少女時代から仲良くしている友人も登場します。

女子あるあるですが、共通の友人の噂話に花が咲く場面では「幸せって何?」みたいな話題も出ます。これ本当にあるあるだと思います。

他者と比較して内心でマウントを取ることで幸せを確認するのではなくて、私も由々みたいに外見や固定概念にとらわれない心でいたいです。

「幸せ」かどうかは何よりも自分の価値観で計るものですね。

この物語の中には様々な女性の生き方が散りばめられています。

生きる上で由々が特に大切にしている価値観が二点あるようです。

一つは自分の感性を大切にすること、感性に従うこと。たとえそれが衝動的なものであっても!

もう一つは、若くない身体に若い頃の記憶や憧れが当然のように息づいていること。

物語には、そんな中年以上の年齢の女性たちが端役として何人も登場します。

高楼さんは由々を通して、私たち大人の女性にエールを送ってくれているように感じます。

 

さて、この物語には「中年以上の女性の恋心」がとても丁寧に描かれています。

前述しましたが、由々は20代前半の男性・龍彦さんと知り合い、次第に恋心を抱くようになります。

恋する女そのものと言えるような心理描写もあり、読んでいるほうはハラハラドキドキ(笑)…。

でも由々は抑制の効いた素敵な大人なので見苦しい言動は一切なしです。

由々の恋がどんな結末を迎えるのか、大人女子としては大変気になるところですね!

 

物語は秋の気配の訪れとともに終盤に向かいます。

最後に由々は、このひと夏の経験を通して「自分で自分を受け入れる」という境地に至ります。

この終盤の場面、山頂で素晴らしい景色を見たかのように清々しさが味わえるので、ぜひぜひ実際に読んで味わっていただきたいです。

人はいくつになっても変化し続けますし自分の在り方が揺らぐこともあると思います。

この物語を読むと、子供の頃からいくら年月が経とうとも現在の自分と地続きなんだと思えてきます。

そして何十年も心に刺さっていた小骨が、あるときふいに抜ける瞬間が訪れることがあるんだと思えます。

そう思うと未来に希望が持てるし、年を重ねるのは決して気持ちが沈むようなことではないのだと思います。

やっぱり高楼さんは大人の女性へエールを送ってくれる作家さんだと思います!!